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Produce by 朝日インテック

“道”を創るTopics

Vol.3
次世代医療技術の最先端を目指す
新たな開発拠点「東京R&Dセンター」

2022年2月、東京・羽田に朝日インテックの新たな研究開発拠点となる「東京R&Dセンター」が設立された。愛知・瀬戸のグローバル本社・R&Dセンターに次ぐ、医療分野の技術開発を中心とした拠点となる。次世代医療機器技術の最先端を目指し、研究開発を加速させていくため、首都圏へ大きな一歩を踏み出した朝日インテック。全国から技術者を集め、これからさらに規模を拡大していく計画だ。今回は、東京R&Dセンターのプロジェクトリーダーを務める執行役員・石原和人と、メンバーである黒柳優樹に、その役割や想い、将来構想について聞いた。

加速する医療分野のDX化
先進テクノロジーに向き合う体制の強化へ 

創業時より研究開発を経営の重要項目として位置付ける朝日インテックは、複数のR&Dセンターを置く。素材開発や金属加工を行う創業地・大阪をはじめ、樹脂開発を行う静岡、精密加工技術の中心拠点となる東北、そして、メディカル製品・技術に特化した愛知・瀬戸のグローバル本社・R&Dセンター。ここから世界を席巻する技術や製品が数多く生み出されてきた。
そして2022年、従来のガイドワイヤー・カテーテルを中心とした開発機能の強化に加え、スマート医療やロボティクスなどへとつながる医療分野の開発拠点として「東京R&Dセンター」を設立した。

デジタル技術の進化でビジネスも多様化している。あらゆる業界がDX(Digital Transformation)の潮流に直面し、急激に推し進められている革新的なイノベーションは、医療分野においても例外ではない。従来の医療機器と同様に、疾病の診断・治療・予防を目的とした“プログラム医療機器” が登場し、開発環境が世界で整いつつある。
日本でもプログラム医療機器の市場拡大が注目されているなか、成長傾向にあるのが患者個人に直接アプローチする製品だ。ソフトウェアで診断・予防などができるため、生活習慣病など個人の意識や行動に起因することが多い疾病などには特に有用である。加えて、通常の医療機器とは異なり、設備機器や施設、生産ラインなどが不要なため、企業が参入しやすいことも成長傾向の大きな要因といえるだろう。プログラム医療機器をはじめとした医療分野の先端技術は日々進化し、最先端のテクノロジーが次々に生まれている。

※プログラム医療機器
汎用コンピューターや携帯情報端末等にインストールされた有体物の状態で人の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること又は人の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされているもの。医薬品医療機器等法第2条第4項の医療機器の定義に基づく。

「長年、医療用のガイドワイヤーでトップシェアを築いてきた当社も、次に動き出さなければいけません。時代の潮流からさらにその先へ、次に来ると思われる医療の先を見据え準備をする必要が出てきたのです」と、石原は新拠点設立の経緯を語る。

加えて、採用面での課題もあった。
創業より45年以上を経て、朝日インテックは海外にも多くの拠点を置くグローバル企業となった。「研究開発型企業」としてより良い技術を創出するためには、優秀な人財の確保も早急に解決すべき課題である。
人口が集中する首都圏で、イノベーションが生まれやすい環境であれば、自ずと当社の理念と共鳴する人財も獲得しやすくなる。

こうして、首都圏での新しいR&Dセンターの設立が本格的に動き出した。

医療分野への取り組みに適した環境は複数あったが、「先端技術」と「文化産業」をテーマとした大型複合施設「羽田イノベーションシティ」が最終的に選ばれた。
「コロナウイルスの影響で、羽田空港には運航をストップした飛行機がずらりと20機以上並んでいました。通常では考えられない景色でしたね」と、石原は視察当初を振り返る。
「でも、飛行機は将来必ず飛び立っていく、今はその準備段階にあると考えました。この状態がずっと続くことはなく、これから先端医療に向かって飛び立つ準備をする自分たちと何かつながるものを感じましたね」。

随所に最先端技術が導入され注目を集めているこの施設には、さまざまな企業や店舗が集積している。入居する業種も多岐にわたるが、共通のコンセプトを持つところは、通常の施設とは一味違う。加えて、羽田のある大田区は、日本の産業を支えるモノづくり企業が多数集結している日本有数の街だ。

「空港に近いとなると、全国でも場所は限られています。人と人との出会いからネットワークが生まれ、インスパイアされる街。それらがすべて創造につながるのではないかと考えています。羽田イノベーションシティは成長し続ける企業とのコラボレーションなど、さまざまな可能性を秘めた街です」。

拠点の確定後、朝日インテックの全国の支社・支店からロボティクスをはじめとした研究開発に携わる技術者たちがプロジェクトメンバーに選ばれた。コロナ禍でもプロジェクトは着々と進んだが、課題もあったとメンバーの一人、黒柳が振り返る。

「全国に分散されていたメンバーとはリアルな場所で集まることができず、空気感が伝わりづらかったこともあり議論の深め方が難しかったですね」。活発な議論を行うには対面でないと難しい面もある。会議を週1〜2回行ったとしても、物理的な距離がコミュニケーションの範囲を狭めてしまっていたようだ。
そこで黒柳は、「しっかりとした軸を創るということが大切だと思いました。経営陣からは目指す構想を、社員からはユーザーとしての意見を聞き取り、それを言語化するということを意識しました」。

ぶれない軸をつくり、“コンセプトの言語化”でプロジェクトの進行は加速した。

コミュニケーションとコラボレーションを重視
想いを交わすオープンイノベーション拠点

新拠点の外構工事は二期に分けて行われることになり、第一期工事の終了とともに開所式を迎えた。建築設計のキーワードは、「コミュニケーション」「多様性」「合理的動線」「リフレッシュ」の4つ。ハード面にはプロジェクトメンバーの想いも反映された。

“コミュニケーションが生まれ、社内外のコラボレーションが実現できる場所”という想いは、東京R&Dセンターの随所で形となっている。その一例として黒柳は、「人と人の距離が近づくように意識し、意図的に木のぬくもりを感じる空間にしました」と紹介する。医療系の施設は白を基調とするのが一般的だが、清潔さを感じる一方で、冷たさを感じる場合もあるからだ。
また石原も、「緊張感がある病院とは違い、ここでは医師や医療関係者の方々にもゆったりと本音を話してもらいたいと思っています」と補足する。二人の言葉には、「現場主義」という朝日インテックが重んじる“ものづくりの根幹”が息づいているといえるだろう。

最高のアウトプットを創出するためのオフィス環境にも力を入れていると黒柳は続ける。「空間を贅沢に使い、キッチンやコーヒーカウンターを設置して会話が生まれるような工夫も。これから工事がスタートするエリアでは、回遊性を持たせたスペースも計画中です。集中したい時や意見を交わしたい時など、働く場所にも選択肢が生まれるように。そして何より落ち着いて仕事ができる場所にしたいと考えています」。

東京R&Dセンターは25人規模でスタートしたが、次世代医療機器を中心に開発事業は多岐にわたる。なかでも、プラズマガイドワイヤーにかかわるソフトウェア開発は、東京R&Dセンター設置のきっかけにもなったプロジェクトだ。

現在、研究・開発が進んでいるプラズマガイドワイヤー。ガイドワイヤーの先端からプラズマを発生させて血管の詰まりに穴を開けるもので、特にCTO(慢性完全閉塞病変)治療において、医師や患者の負担をさらに軽減する医療機器として期待を集めている。手術の精度や再現性を高めるためには、ガイドワイヤーの操作をサポートするソフトウェアの開発が急務。世界中で同じ手技ができるようになると、血管インターベンションが大きく変化し、まさにイノベーティブな開発になるという。ここから医療を変える技術が生まれる日もそう遠くなさそうだ。

※CTO(Chronic Total Occlusion)
慢性完全閉塞病変。血管内が完全に詰まったまま、長期にわたり放置された病変のこと。

「羽田イノベーションシティ」にはロボティクス関係の企業も多数入居。加えて、大田区のモノづくり企業には、研究開発に興味をもつ企業も多い。周辺には医療系企業や国立研究所などもあり、他企業や施設とのコラボレーションが実現できる環境が整う、そんなオープンイノベーション拠点に対し、石原は期待を込める。
「海外には、医療クラスターと呼ばれる地域もありますが、日本にはありません。だからこそ、この地で生まれる共創には非常に高い期待を持っています。社内で一つの技術を突き詰めることは可能ですが、型破りな発想は多様性からしか得られません」。

東京R&Dセンターが創出す
“見えないもの”が変える医療の未来

医療のDX化からどんな未来が見えるのだろうか。
石原は、「医療に必要な新しい価値を持った技術を集め、醸成していくことが大切だと思っています」と語り、カタチのないものが評価される時代がくると予測する。「ロボットはその典型です。カタチのあるロボット本体とそれを動かすカタチのないソフトウェア。見えるものと見えないものの組み合わせが大切になってくるでしょう」。
その上でこれから注目するのは“データ”であると続ける。「朝日インテックの開発したデバイスから得られるトップレベルの医師のストラテジーや操作性など、我々にしか集められない膨大なデータがあります。そのデータを活用した治療システムなども考えられますね」。

先端技術を活用した医療の未来に寄り添う拠点を目指し、世界の医療界に貢献する――東京R&Dセンターが担う役割は決して小さくない。最後に両名に、東京R&Dセンターのこれからについて聞いた。

黒柳は、「挑戦することに近道はないので、我慢強く、妥協せず、良いものを作るために誠意をもって取り組んでいきたいと思っています。東京R&Dセンターが、多くの技術者を惹きつける拠点になれるよう努めていきます」と、新拠点のさらなる発展に想いを寄せる。

一方の石原は、「これから規模も大きく成長していきます。こだわりが強く、諦めが悪い人、そして何より人を助けるという医療への想いをもって、開発に情熱を傾ける技術者に集まって欲しい。東京R&Dセンターの建物も含め、人財や技術、そしてチャレンジ精神、医療のために残せるものをしっかりつくっていきたいと思っています」と熱を込める。

世界への玄関口となる羽田の地で、企業の枠を超えたプロフェッショナルたちと先進テクノロジーの創出を目指す――。朝日インテックのさらなる飛躍に向けた、技術者たちの舞台が整った。





▼プロフィール

【󠄀石原和人 KAZUHITO ISHIHARA】(写真右)
1984年3月山梨大学工学部応用化学科卒業。1984年4月テルモ株式会社入社、主にカテーテルの開発に従事。2018年朝日インテック入社。2019年執行役員(現任)。入社以来一貫してメディカル事業に携わっており、医療機器の研究開発を担当。2021年5月、東京R&Dセンター設立プロジェクト発足に伴い、プロジェクトリーダーとして同プロジェクトを統括。2022年2月より東京R&Dセンター長も務める。

【󠄀黒柳優樹 YUKI KUROYANAGI】(写真左)
2014年12月朝日インテック入社、総務グループに所属。2019年7月、朝日インテックの100%子会社であるトヨフレックス(東京・新宿)へ出向。2020年7月より現在まで、同社管理部門のチームリーダーとして、人事・総務・経理・IT全般のマネジメント業務を担当。2021年5月、東京R&Dセンター設立プロジェクト発足に伴い、事務局担当として同プロジェクトへ参画。



写真=太田昌宏(スタジオアッシュ)

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